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結露は夏にも起こる?壁内結露に要注意

木造住宅を長持ちさせる、
壁内結露防止のポイント

木造住宅の大敵となる結露や湿気。木材は湿気や結露を放置することでカビの発生や木材の腐食を引き起こし、建物の耐久性や居住環境に深刻な悪影響を及ぼす可能性があります。一般的に結露と言えば冷たい冬の窓ガラスに現れる水滴を想像しがちですが、実は暑い夏にも壁の内部で結露が発生していることがあります。壁の中でひっそりと起こる「壁内結露」は、見えないからこそ気付いた時には恐ろしい被害を私たちの住まいにもたらしてしまう可能性があります。このコラムでは、夏にも注意が必要な壁内結露の原因と防止策について、木造住宅の長期的な健康と安全を守るための知識をご紹介いたします。

壁内結露とは?

壁内結露は、建物の壁、床、または屋根の内側などの「構造内部」で発生する結露です。特に、外気の影響を直に受ける屋根や外壁の内側では室内外の温度差が高く、空気中に含まれた湿気が冷えて壁内に水滴が形成されやすくなります。

通常、壁内結露は目に見えない部分で発生し、発見が遅れがちになることから、長期にわたって構造体に深刻なダメージを与える可能性があります。結露が発生すると、木材の腐朽をはじめ、接合金具の腐食、断熱材の劣化など、建物の寿命を縮める原因となります。また、構造内の湿度が高まることでカビやダニの発生にも拍車がかかり、最終的には建物だけでなく居住者の健康にも悪影響を及ぼすという最悪の結果にもつながります。


結露には冬型・夏型があり、特に最近では住宅の高気密・高断熱化が進んでいることから、夏型結露の問題が重要視されています。夏型結露は、夏場の湿気を帯びた外気が壁を通じて建物内に侵入し、エアコンで冷やされた室内の空気に触れることで発生します。特に、エアコンが効いた部屋では壁の内部にも冷たい部分ができやすく、そこに外からの湿った空気が触れると水滴が発生します。この現象は通常目視することのできない場所で発生し、ひそかに進行するため、知らず知らずのうちに建物の木部を腐食させる原因となります。
壁内結露が発生する原因

ここからは、もう少し細かく壁内結露が起こる原因を紐解いていきます。壁内結露が起こる主な原因としては、以下の3点が挙げられます。

[ 透湿抵抗を無視した素材選定 ]

壁の構造において、透湿抵抗(湿気の通りにくさを表す指標)が高い素材を壁の内部に使用してしまうと、湿気が壁内に閉じ込められる原因となります。そして溜まった湿気が壁内部の冷たい面に触れ、結露を引き起こす可能性があります。透湿抵抗が高い素材の例としてはビニール素材やボンドを使った合板などで、一方透湿抵抗が低い素材は木材や石膏ボードなどが挙げられます。湿気は透湿抵抗の高い素材から低い素材へと移動していくため、透湿性を考えずに壁の構成素材を選定すると壁内結露を起こす要因となってしまいます。

[ 湿気排出構造の不備 ]

透湿抵抗を考慮した素材を使用したとしても、壁内の湿気溜まりを完全に予測することは難しいと言われています。万一壁内に湿気が溜まってしまった場合に、物理的に水蒸気を外部に排出する適切な通気層が設けられていないと、壁内に滞留した湿気が逃げ場を失い、結果として結露が発生するリスクが高まってしまいます。

[ 換気の不足 ]

特に高気密住宅では、家の大きさに見合った十分な換気計画がされていないと室内の湿度が上昇しやすくなり、これが壁内結露を引き起こす要因の一つとなります。湿気が室内にとどまると、水分を多く含む空気が壁内にも入り込み、壁内結露を発生させる要因となってしまいます。


壁内結露を避けるためにはこれらの要因を理解し、建築設計段階で適切な対策を講じることが重要となります。透湿抵抗を考慮した壁構成素材の選定や通気を考えた壁構造の設計、さらには家全体の換気計画を見直すことが、壁内結露を防ぐ鍵となります。

花みずき工房の壁内結露対策

上記を踏まえ、花みずき工房では木材を結露から防ぎ、木造住宅を長持ちさせるために様々な壁内結露対策を行っています。中でも大きなポイントとしては、結露計算をしっかりと行った上での壁構成素材の選定と、溜まった湿気を物理的に屋外に排出させるための壁通気工法の採用です。


[ 夏型結露計算と適切な素材選択 ] 

建物の壁は、軸となる木柱以外にも様々な素材で構成されています。具体的には耐震性を高めるための耐力面材や断熱性を高めるための断熱材をはじめ、防水シートやプラスターボードなどで構成されていますが、それぞれの素材で透湿抵抗は変わってきます。



そして、それぞれの素材の厚みや構成、熱伝導率や透湿抵抗、建物内外の温湿度を用いて「結露計算」を行うことで、実際に壁内結露が起こるかどうかを判定する事ができます。
下記表の様に、境界面温度が露点温度に達してしまうと、壁内のその部分で結露が発生するという事になりますので、結露が起こらないように壁構成素材の選定と設計を行っています。



また、一般的な結露計算(定常計算)は主に冬季の結露を対象にしており、浜松の気候では外気温6度(湿度70%)、室温15度(湿度60%)で計算されます。しかし、実際の環境では、設定温度よりも暑い日も寒い日もあり、気温や湿度が1日の中でも大きく変動します。そのため、花みずき工房では、実際の環境により近い設定で結露計算を行い、冬と夏の両方で壁内結露が起こらないことを確認しています。具体的には、冬季には外気温を0度、室内温度を20度、夏季には外気温を40度、室内温度を25度に設定しています。この設定により、より現実的な条件下での結露リスクを評価できます。



定常計算:冬型(室内15℃:湿度60% / 屋外6℃:湿度70%)


任意計算:冬型(室内22℃:湿度50% / 屋外0℃:湿度60%)


任意計算:夏型(室内25℃:湿度50% / 屋外40℃:湿度80%)


以上のように、花みずき工房では冬型結露はもちろん、壁体内で起こりやすいとされる夏型結露にも配慮した結露計算を行い、実際の気候環境下でも壁内結露の発生リスクを大幅に抑えた壁素材の選定と構成を用いて家づくりを行っています。


[ 壁通気工法の採用 ]
上記のように結露計算を行うことで壁内結露の発生を予測し、結露発生のリスクを大幅に抑えることができますが、近年の異常気象など通常でない環境下でも必ずしも結露の発生が起こらないとは言い切れません。そこで花みずき工房では物理的に壁内を通気させる「壁通気工法」を採用しています。
壁の内部に通気層を設けることで、壁内に閉じ込められた湿気が外へ逃げる経路を確保しています。これにより、壁内の湿度が高くなることを防ぎ、結露の発生を未然に抑えることが可能となります。



温められた空気が上に昇っていく上昇気流を利用して、常に壁内の湿気が軒裏を通じて屋外に排出されるようになっています。
また、壁だけでなくて屋根や床下にも通気工法を採用しているため、建物の構造部分を常に換気し、木造駆体を長持ちさせる家づくりを行っています。


通気層について詳しいコラム >>
まとめ

今回のコラムでは、夏にも発生する壁内結露について紹介しました。結露対策は木造住宅の耐久性を守るために非常に重要です。壁内結露を防ぐためには、透湿抵抗を考慮した壁構成素材の選定や通気を考えた壁構造の設計、さらには家全体の換気計画を見直すことが大切です。
花みずき工房では、基準値よりも厳しい設定条件で結露計算を行い、万全の結露対策を施した長寿命で快適な住まいを実現しています。花みずき工房の壁内結露に対する取り組みをもっと詳しく知りたい、実際の施工例を見てみたいという方は、ぜひイベントに参加してみてください。家づくりのプロである花みずき工房のスタッフが、丁寧にご説明いたします。

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Yukina Yamaguchi

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