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日本古来から伝わる、在来工法(木造軸組工法)の魅力

2×4工法との違いや、
進化する軸組工法もご紹介

住宅をはじめとする建築物は、実に様々な工法で建てられており、木造、鉄骨造、RC(鉄筋コンクリート)造などが代表的な工法になります。その中でも、日本の住宅の約8割を占めているのが木造建築で、ほとんどの木造建築は古来から日本に伝わる「在来工法(木造軸組工法)」と、アメリカから伝わった「ツーバイフォー工法(木造枠組工法)」の、どちらかで建てられています。そこで今回は、最もシェアの多い在来工法の魅力を、ツーバイフォー工法と比較しながらご紹介させて頂きます。
木造軸組み工法
在来工法(木造軸組工法)とは?

在来工法(木造軸組工法)は、日本の伝統的な木造建築の工法で、現在日本で最も多く採用されている工法です。柱や梁(はり)などの「軸組」と呼ばれる構造材を組み合わせて建物を支えることから軸組工法と呼ばれています。柱や梁の他にも斜めに支える筋交い(すじかい)や、建物上部を支える桁(けた)、基礎の上で柱を支える土台(土台)などの線状の骨組みで建物を支えるため、線で支える工法とも表現されます。
「在来工法」という名称は、1960年代に北米から導入された「ツーバイフォー工法(木造枠組工法)」などの新しい工法と区別するために使われるようになり、今もその呼び方が広く使われています。

ツーバイフォー(木造枠組工法)とは?

ツーバイフォー工法(2×4工法)とは、アメリカやカナダで発展した木造建築の工法で、木材の規格材である2インチ×4インチ(約38mm×89mm)の断面寸法を持つ木材で枠組みしたパネルを主要な構造材として使用することからこの名前がつけられ、木造軸組み工法とも呼ばれています。この工法は、柱と梁で支える「木造軸組工法」に対して、パネル状にした壁や床、天井などの「面」で建物を支える「面構造」を特徴としているため、面で支える工法とも表現されています。

在来工法とツーバイフォー工法のイラスト
在来工法とツーバイフォー工法の違い

現在、国内の木造住宅市場で合わせて9割以上のシェアを占める、在来工法とツーバイフォー工法。次に、同じ木造の建築工法でありながらも明確な違いを持つこの2つの工法について、「構造の違い」、「コスト面の違い」、「施工期間の違い」について比較していきます。

構造の違い
在来工法は、柱や梁、筋かいなどの「線」が基本となる構造で、建物の垂直方向の荷重は柱が支え、水平方向の荷重は梁が受けます。屋根や床の重みを梁が柱に伝え、その力を基礎へと分散させます。この分散により、地震時の荷重が特定の部位に集中することなく、建物全体が安定して支えられます。
対してツーバイフォー工法は、床、壁、天井といった「面」が基本となる構造で、面で囲まれた部分が箱形の構造を作り出し、建物全体で力を分散して支える仕組みです。面で支えるため柱や梁が不要で、地震の揺れや風の圧力を建物全体で受け流します。

コスト面の違い
在来工法は、使用する材料が多様であり、特に木材の量や品質によってコストが大きく変わります。高品質な木材を選べばコストが上昇しますが、比較的安価な材料を使用することも可能です。施工には伝統的な技術が求められるため、大工の熟練度に依存しやすく、工期が長くなると人件費が高くなる傾向があります。
対してツーバイフォー工法では規格化された材料を使用するため、材料費は比較的安定しています。工場であらかじめカットされた木材を使うプレカット工法により、材料の無駄を抑えられます。施工が効率的であり、標準化されたプロセスにより人件費が抑えられるため、施工費は比較的安価で、工期も短縮できるため、総合的にコストを抑えやすい傾向があります。

施工期間の違い
在来工法は、柱や梁を組み立てる際に大工の熟練した技術が必要となり、現場での手作業が多いため、施工期間が長くなることが一般的です。特に、カスタマイズされた設計や複雑な間取りの家の場合、工期が延びることがあります。
対してツーバイフォー工法では、部材が工場であらかじめプレカットされていることが多く、現場での組み立てが迅速に行えるため、施工期間が短くなります。
木造軸組み工法
在来工法が愛され続ける理由

それぞれ異なるメリットやデメリットを持つ在来工法とツーバイフォー工法ですが、木造住宅市場では在来工法のシェアが8割程度と圧倒的に多く、ツーバイフォー工法の2割弱というシェアを大きく上回っています。次に、在来工法が今もなお多くの住宅会社で採用されている理由をご紹介いたします。

設計の自由度の高さ
在来工法は柱と梁で建物を支える「線構造」のため、壁は建物の荷重を支える必要がなく、仕切りや装飾としての役割が中心です。そのため、大きな開口部(窓やドア)や、広い空間、吹き抜けなどの設計が容易で、個別の要望に応じたオーダーメイドの設計が可能です。複雑な屋根の形状や和風住宅のような伝統的な構造、またはモダンで複雑な間取りの家など、幅広い設計に対応できます。
一方、壁が建物の構造を支える「面構造」のツーバイフォー工法では間取りに制約が生じます。特に、壁を取り除いたり大きな窓を設けたりすることが難しいため、設計の自由度は低くなります。

リフォームや増改築の柔軟性
在来工法は柱と梁で支えるため、壁を取り払うことができ、間取り変更やリフォームが容易です。たとえば、壁を取り除いて部屋を広くする、部屋を追加する、または家全体のレイアウトを大幅に変更することも可能です。
一方、ツーバイフォー工法は壁が構造体の一部を担っているため、壁を取り外すことが難しく、大幅なリフォームや間取りの変更が制限されます。特に、構造壁を取り除くと建物の強度が落ちるため、リフォームの自由度が低いです。

日本の気候に適した通気性と湿気対策
在来工法の通気性が良さも、高温多湿な日本の気候に適しています。木造軸組工法では、床下や屋根裏に空気が通りやすく、湿気対策として有効で、建物の長期的な耐久性を維持するために重要な要素となります。木材そのものの調湿機能も活かしやすいため、建物内の湿気をコントロールし、快適な室内環境を保ちやすいです。
一方、ツーバイフォー工法は「面構造」のため、建物全体の密閉性が高くなりがちです。特に湿気の多い日本では、十分な防湿対策を行わないと湿気が溜まりやすく、木材の腐朽やカビが発生する可能性があります。

材料の流通量が多く、対応できる職人も多い
在来工法は、日本国内で古くから採用されてきた伝統的な工法のため、材料を取り扱っている業者や施工を担う職人が多いことも長年愛されている理由の一つです。建築会社選びの選択肢も広がり、リフォームや修繕が必要になったときでも、新築時に依頼した建築会社以外の業者に依頼することができるのも安心です。
一方、ツーバイフォー工法の場合は対応できる業者が限られたり、材料が輸入品に依存するため、流通量が不安定になる場合もあります。
木造軸組みパネル工法
さらに進化する軸組工法

前述のとおり、在来工法は日本で長年採用されてきた優れた木造建築工法ですが、近年ではさらに進化を遂げて耐震性や間取り設計の自由度が向上しています。次に2つの進化した木造軸組工法をご紹介いたします。

木造軸組パネル工法
木造軸組パネル工法は、従来の木造軸組工法にパネル工法の要素を組み合わせた建築方法です。基本的には、柱や梁を用いて構造を組み立てる軸組工法をベースにしつつ、壁や床にパネルを使用して構造体を補強することが特徴です。

軸組工法に比べて、パネルを使用することで建物の耐震性が向上し、建物全体を「面」で支えながら地震の揺れを分散して吸収します。花みずき工房では、この「木造軸組パネル工法」を採用しており、パネルには優れた耐震性、耐火性、寸法安定性、透湿性を持つ吉野石膏の「タイガーEXハイパー」を使用しています。

木造ラーメン工法
木造ラーメン工法は、在来工法をベースに柱や梁を剛接合(剛に固定)することで、建物の骨組みを構築する工法です。この「ラーメン」という言葉は、ドイツ語の「Rahmen(ラーメン、枠)」に由来し、枠状の構造が特徴です。

柱や梁には強度を高めた集成材を使用し、接合部には特殊な金物を用いて剛接合することで、地震の多い日本でも耐震性の高い安全・安心に暮らせる家を実現しています。また、耐力壁による制約をなくし、S造やRC造のような大開口や大空間を木造で実現できる点も特徴です。ただし、この工法に対応できる工務店は少なく、コストも高くなる傾向にあります。
住宅の構造

今回は、日本で圧倒的なシェアを誇る木造建築工法の在来工法について、その特徴や海外から導入されたツーバイフォー工法との違い、そして在来工法が今もなお愛され続けている理由についてご紹介いたしました。在来工法は、日本の風土や気候に適した伝統的な工法であり、その機能性は長年にわたって証明されています。さらに近年では、在来工法が進化し、耐震性や間取りの自由度がより向上しています。花みずき工房でも、この在来工法とツーバイフォー工法の良さをを組み合わせた「木造軸組パネル工法」を採用し、質の高い住まいづくりを行っています。実際に構造をご見学いただける機会もございますので、ぜひ花みずき工房のイベント情報をご確認ください。


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設計

Kuniaki Suzuki

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